もしデュマーリ島に初代が同行したら(2)

MISSION7

ヘリを追ってやってきたのは研究所のようなビルですが、扉が閉ざされていて中に入れません。近くの排気口か何かのパイプづたいに別の入り口を見つけましたが、こちらも電力が供給されておらずシャッターが閉まっています。仕方ないので隣の棟から入ってみることにしました。
螺旋階段を下っていく間にフィニスが湧いて出てきますが、一緒に出てくるボールのような悪魔を撃つと周りを巻き添えにして派手に自爆してくれます。迷惑な仲間もいたもんです。
「友達は選んだ方がいいぜ」
「身に染みるな」
なんてことを言いながら階段を下って扉に入りました。そこは溶鉱炉のようなところで、下には真っ赤な溶液が川のように流れており暑いなんてもんじゃありません。ここに落ちたら普通死にますがダンテは丈夫なのでちょっとくらい平気…とはいえ2様が暑くて嫌だという顔をしたのでさっさと対岸の部屋に入ります。
エレベーターで更に下っていくと終着点でゴートが待っているのが見えました。しかしいざ着いてみるとエレベーターの柵にひっかかってなかなか来られないらしく、その間に銃をぶっ放して粗方片付けてしまいます。ここへ来てから碌な仕事をしていない気がしますがダンテさんが強いので仕方ありません。
さてエレベーターを降りた先の扉に入ったところはどうやら電車のようで、勝手に動き出しました。これで目的のビルまで行けそうです。もちろん何もないわけがなく悪魔がぞろぞろ出現するので、周りには色々な物が積み込まれていますが気を遣う義理もなく、そもそも電車は動くのになぜ電気がついていないのかは分かりませんが暗くてあまり見えないので、思うままに戦った結果悪魔が消えた時には荷物も全滅していました。
二人いるだけあってあっさり片付いたあとは目的地に着くまでまだありそうなので、しばらく電車(と言っても座席はありませんが)に揺られてぼんやりします。暗い密室に二人っきりでいるとなんだか妙な気持ちになるなあ…と2様がちらりと隣の初代を見てみると、ばっちり目が合いました。が、それもほんの一瞬のことで初代はすぐに目を逸らします。
「それにしても、ここの施設は何なんだろうなー」
さして興味もなさそうに明後日の方向を見て言うのを無視して2様は初代を捕まえ、くるりと向かい合わせました。2様に引き寄せられた初代は一瞬何か言いかけましたが何も言わず、一応ツンデレとして今にも文句を言いたげな顔のままではありますがまっすぐ2様を見ます。
そして二人の顔が近づいたちょうどその時、電車の揺れが止まってドアが開きました。
至近距離のまま刹那の沈黙が降ります。
「……着いたみたいだぜ」
「…そうだな」
早くしないと敵を逃してしまうので実際のところいちゃついてる場合ではありません。気を取り直して二人は電車を降り、エレベーターに乗って屋上のヘリポートを目指しました。

MISSION8

屋上には一台のヘリと、それに乗り込もうとしている一人の男がいました。ヘリにはウロボロスという社名が書いてあり、この男がマティエの言っていた悪魔の力を使うというアリウスです。悪そうな顔といいタイツみたいな白のぴちぴちスーツといい見るからにまともな社長さんではないことはわかります。
二人の登場にさして驚くふうでもなく、まるで何をしにやって来たのかが分かっているような適当な反応です。せっかくの喋る敵の登場にも初代はやる気がないらしく2様の後ろで大人しくしていました。
アリウスは2様の軽い挑発を受け流して巨大な悪魔を召喚するとヘリに乗って去っていってしまいました。それを見上げながら初代が少し感心したふうに言います。
「とぼけるかと思ったが…目の前で悪魔呼んで逃げるとはいい度胸してやがる」
デビルハンターのことを知っていたのかどうかは分かりませんが、いずれにしろマティエの言っていたことは本当のようです。
「悪魔に関わろうとする人間だからな」
そんなもんだと2様が言いました。
さて置き土産の大きな牛のような悪魔と対決です。前方に伸びて曲がった角がなかなかかっこいいです。これまた大きなハンマーを振り回していたかと思うと突進してきたので左右に跳んで避けました。
「おっと、こんな服着てきたのがまずかったか?」
初代が自身の赤いコートをひらひらと見せると、2様はひょいと肩を竦めて、
「脱いでもいいんだぞ」
と言いますが脱いだら違うものが寄ってきそうなので初代は遠慮しました。
ちなみにその間に牛は向こうで火を吐いたり火を焚いたりしていて迂闊に近付けないので遠くから銃を撃ってダメージを与えていきます。
するとやがて牛は頭上でハンマーを振り回し竜巻を起こし始めました。それに引き寄せられてしまわないようになんとか踏ん張ってやり過ごしますが、何を思ったのか2様は敢えて飛び込んでいくと一振り二振り斬りつけ、振り回されるハンマーをなんとかかわして戻ってきます。
「いけそうか?」
「ああ、援護を頼む」
バチバチと魔力を漲らせる2様にOK、と初代は応じて銃を構えました。そして再び牛が風を起こすのを待って2様が飛び込み、初代も2様に当たらないよう反対側に走り込んで銃で援護します。
初代の銃と魔人化した2様の剣を浴びた牛の悪魔は咆哮を上げると、仁王立ちのまま炭のように黒く固まって動かなくなりました。
くるくると二つの愛銃を回してからホルスターに収め、初代はアリウスの去ったほうを見上げます。
「さて、ウロボロスの尻尾を捕まえに行くか」
2様も背中に剣を戻して頷きました。そして踵を返し来た道を戻ろうとした背後で初代が意外そうに声をかけます。
「飛び降りないのか?」
「ワンパターンではつまらないだろう」
振り向きもせずに2様はすたすたと行ってしまいます。
まあそりゃそうかもなと分かったような分からないような初代ですが、早く来いと2様に呼ばれてその後を追いました。

MISSION9

屋上から戻るとビルはあちこちから火の手が上がり、「あと数分で爆発する」と警告音が鳴り響いていました。今更証拠隠滅もないでしょうが、ダンテもろとも吹き飛ばすつもりなのでしょうか。いずれにしろやっぱり飛び降りた方が良かったんじゃないかと初代は思いましたが、大人しく2様に付いて走ります。
先程乗ってきた密室電車は残念ながら動かなくなっているので線路の上をひた走ります。こんなことならさっきやることやっておけばよかったのに、惜しいことをしました。
怪しげな小部屋を抜け、溶鉱炉を抜け、螺旋階段を駆け上り棟の外に出ると、来た時にはなかったはずの電力供給スイッチが3つほど点在しているのが見えます。とりあえず押せるものは押すのが信条なので手分けして押す(正確には斬る)ことにしますが、走り寄っていった初代がいきなり「やばい!」と素っ頓狂な声を上げます。どうしたと2様が見遣ると初代はアラストルを構えたままぽかんとしながら2様に向かって言いました。
「周りの雑魚が気になって集中できねえ…!」
冗談みたいな話ですが結構切実です。
「気持ちは分かるが、いちいち相手にしてられんぞ」
上空には沢山の鳥(もちろん悪魔でピュイアという可愛い名前だそうです)が飛んでいます。狩人の職業病なのかなんなのかついついスイッチよりもそっちを追ってしまうようです。
「おいアラストル、どこ狙ってんだ!」
自分のせいにされたアラストルがバチバチと反論しているらしいのを横目に2様は自分の目の前のスイッチを斬りました。
「ロックオフしろ、ダンテ」
2様がアドバイスをしましたが初代は難しい顔をして首を傾げます。ロックオフすることを知らないようです。
「…なら、ジャンプ斬りをうまく当てろ」
「なるほどその手があったか」
言っている間にも2様がもう一つのスイッチを、初代もようやくスイッチを斬り、3つのスイッチで棟のシャッターが開いたので空からの攻撃を避けながらそこへ飛び込みます。するとそこは、ここへ最初に来た時に見覚えのある部屋でした。その時は扉が閉まっていて諦めましたがさっきのスイッチのおかげで今は動いています。
扉をくぐると広い空間の壁には巨大な換気扇が回っており、もの凄い風圧で立っているのもままなりません。しかし部屋の中央に小型の飛行機があるのを見て初代が何かを閃いたようです。
「あれで脱出できるんじゃないか?!」
吹き荒ぶ風に負けないように叫びました。
「どうやって!」
2様も同様に叫びました。
「こういう状況じゃお約束だろ!」
なぜか初代は自信満々です。どうやら少し前に似たような経験をしたようですが、これでまた同じことが起こったら都合が良すぎるというか偶然とは恐ろしいというかワンパターン過ぎるだろう…と2様は思いましたが実はちょっと気になるので、二人は転がるようにして飛行機の中に乗り込みました。
「で、どうするんだ」
「壁を壊すんだよ」
「これに機関銃なんか付いていないぞ」
「……。」
かつてのプロペラ戦闘機カーニバル号とは違ってこれは至って普通の移動用飛行機なので当然です。沈黙した初代の肩に2様はポンと手を置きます。
「ダンテ。別の方法を…」
「待てよ。穴ならあったろ」
「穴?」
「換気扇だよ。あれを止めればファンの間から出られる」
「なるほど。それならまた電気を止めれば…」
「そんなのめんどくせえし時間もないだろ。手っ取り早く行こうぜ」
不敵な笑みを浮かべた初代は操縦席でぽちぽちやり始めました。嫌な予感がした2様が止めようとする暇もなく初代は飛行機を発進させ、そしてそのまま席を離れると2様と共に後ろのほうへ避難します。
ドゴン!ともの凄い音と衝撃で飛行機は巨大な換気扇に突っ込みました。
急いで外へ出てみると突っ込んだ飛行機で見事に換気扇は止まっており、確かにその羽の隙間から脱出できそうです。
得意げな顔を向ける初代に2様はやれやれと溜息をつきました。
「スクラップにされなくてよかったな」
「その前に爆発するだろうけどな」
けろりと言って初代は脱出口に向かいました。2様もあまり人のことは言えませんが無鉄砲なのは見てて気が気ではありません。あとで言い聞かせておこうと思いながら2様もそれに続きます。
二人が脱出してまもなくビルは爆発し炎に包まれました。

結果的にウロボロスの一端を潰すことができて一石二鳥だったな、と崩壊するビル群を初代が眺めているところへ、あの後バイクを取りに飛んでいった2様がそれに乗って颯爽と戻ってきました。
「少し寄り道をするぞ」
「寄り道?」
「この近くの遺跡にアルカナがある」
アルカナというのは魔界を呼ぶ儀式に必要な4つのアイテムのことで、アリウスが欲しているものでもあります。おそらくルシアが先に向かっていると思われますが、ダンテも立ち寄ることにします。
初代が後部座席に乗ったのを確認して、2様はバイクを走らせました。

MISSION10

「ここが遺跡か?」
バイクから降りた初代が辺りを見回しました。ほとんど崩れ落ちた石の壁が迷路のように走っているそこは遺跡というよりは庭のようなところです。
「いや、この下だ」
2様も降りてやってきました。目的の遺跡は地下にあるようです。よく見ると庭の左右にそれぞれあからさまに怪しいオブジェクトが浮いているので何か仕掛けがあるのでしょう。
「なんであんたそんなことまで知ってるんだよ」
下調べをしたわけじゃあるまいしと初代は疑問に思いますが、2様はごそごそとポケットから小さい紙を取り出しました。そこには地図が書かれてあり、いくつか目印もついています。
「あのばあさんから貰ったのか?」
「ああ」
一体いつのまにそんなやりとりがあったのか初代は気づきませんでしたが、それならこれまでの道中も納得しました。闇雲にバイクをかっ飛ばしていたわけではなかったのです。
さてすっきりしたところで探索を開始します。
庭の中央に行くと魔術師が出現しますが、オブジェクトのある石段まで行くと勝手に退散していくのでいちいち相手をしなくてもスルーできそうです。オブジェクトを叩くと中央より奥にある柵の更に奥が青白く輝きます。ただしそれも片方しか灯らず、しばらくすると消えてしまいました。
「なるほどそういう仕掛けか。あっちは任せな」
そう言うと初代はもう片方のオブジェクトのところへ向かいました。つまり片方が消えないうちに両方灯せばいいらしいのですから、二人の共同作業で楽勝です。
柵が開き、そこにあったのは地下墓地にもあった青いスフィアです。何度か斬り付けていくとやがて庭の中央が開いて地下への階段が現れました。
「ビンゴ!」
しかしさっそく初代が向かおうとしたその時、突然地面が歪んで蟻地獄のように初代は足をとられてしまいます。咄嗟に2様も駆け寄って救出しようとしましたがその瞬間に崩れた穴に二人とも落ちてしまいました。
「いてぇ…」
「大丈夫か?」
背中から落ち、顔を顰めながらもなんとか起き上がる初代の横でしっかり足から着地した2様が手を貸します。さすが高いところから落ちることにかけてはプロの2様です。
落ちた先は遺跡ではなく地底湖らしき地下空間でした。飛び回っている小さいのはデモノコーラス、そしてゴーレムも二体います。デモノコーラスは呪文を使ってきて邪魔なので2様のサブマシンガンでさっさと片付けて貰い、ゴーレムも走り回る前に剣でしっかりとトドメを刺して倒します。
「ったく、手間かけさせやがって」
「さっさと出よう」
そう言って振り返った2様が珍しくビクリと驚いて上を見たので何事かと初代も振り向くと、巨大な蛾が鱗粉を撒き散らしてばさばさと飛んできました。懐かしのモスラをもっと現実的に気持ち悪くしたような悪魔です。それにしてもあの驚きっぷり、2様は蛾が嫌いなのかと意外な一面に初代は少し微笑ましく思っていましたが和んでいる暇はなさそうです。蛾の産んだ芋虫たちが襲いかかってくるのでジャンプして避けます。
「ちっ、親を倒さないとキリがなさそうだ」
初代はグレネードガンを構え、2様も頷いてミサイルランチャーを担ぎひとまず蛾のほうを撃ちます。その間にも下では芋虫が縦横無尽に這い回っているのでジャンプで避けつつの地道な攻撃です。
蛾を倒すと今度は死に際に産み落としたのも含めて沢山の芋虫を相手にしなければなりません。芋虫といえども体高がダンテを越えるほどの大きさです。追いつかれれば容易く飲み込まれてしまう上、こちらの回避よりもあちらの速度の方が早く、やはり上に避けるしかありません。
しばらく地道に撃っていた初代ですが、しっかりと力を溜めていました。
「お前の腕の見せ所だぜアラストル!」
かけ声と共に地を蹴り魔人化するとエアレイドで空からバリバリと電撃を放ちます。上昇飛行の2様とは違い初代はホバリングが得意なので滞空したまま上空から攻撃ができ、このように地を這う敵に対しては無類の強さを誇ります。初代が上からヒャッハーしている間に2様も魔人化し(魔人化すると身体も一回り大きくなるので芋虫に飲み込まれなくなります)剣あるいは銃でばんばん攻撃していきます。
ようやく全てが片付き、降り立ったご満悦顔の初代とアラストルの一方で2様は少しお疲れのようでしたが、まだこの落とし穴から脱出飛行する役目があります。これだから蛾は嫌なんだと服についた鱗粉を払い落としていると、機嫌の良い初代が寄ってきてポンポンと手伝ってくれました。
「ありがとう」
「あんた、蛾が嫌いだったなんて案外可愛いとこあるんだな」
面白そうにニヤニヤして言うので2様は問答無用で魔人化すると初代を無理矢理お姫様抱っこして上まで運んでやりました。

MISSION11

地下に潜って石造りの回廊を下っていき、寺院のようにも見える遺跡に入ると早速猿の一群がお出迎えです。襲いかかってくるムシラをかわして側転しながらショットガン撃ったり、アイボリーで前方を撃ちながら振り返ることもせずにエボニーで背後の敵を撃ったり、2様の華麗な銃捌きに初代はうっかり見とれて傍観してしまいました。すべて一掃した2様が初代を振り返ります。
「どうした?惚れ直したか」
「ハ、巻き込まれて撃たれちゃ敵わねえから見学してたんだよ」
もちろんそこまで無差別に乱射してませんが照れ隠しだと分かっているので2様はハイハイと流して奥へ進みます。内心は喜んでいます。
吹き抜けの高い空間の中央、台の上にスフィアが浮かんでいます。スフィアを斬ると上部の壁が回転し、ちょうど回転壁に空いている穴とその奥の通路が合致して入れる仕組みになっていました。足場がちょっと遠いので2様は飛んでしまいたくなりましたが、初代が先頭切ってひょいひょい渡っていくので仕方なくついていきます。若さか…と2様の頭を過ぎったような過ぎらなかったような気がします。
それはそれとして下り坂を歩いていると背後で何か音がしたので振り向くと、大きな球が天井から落下してきました。
「おいまさか…」
「急げ」
そんな冒険映画を見たことがありました。案の定二人の方へゴロゴロと転がってきたので大慌てで坂を下っていきます。幸いそれほど距離もなく出口に出られました。しかし出た瞬間に2様が初代に詰め寄ります。
「なぜあそこでスティンガーを出すんだお前は」
「だって速いんだよあれが」
「俺を串刺しにする気か?」
「あんたも転がってるんだから当たらねえって」
歴代唯一無傷の2様の心臓がまさか初代に串刺しされる恐れがあったとは2様も予想外だったに違いありません。しかも初代のスティンガーの勢いは歴代の中でも随一なのです。
「…皮肉なら酷いぞ」
「どこがどう皮肉か知らないが…」
ガシャン!
初代の言葉を遮り突然前方の天井が落ちてきて二人は驚いて見ました。天井は鎖で吊されており、カタカタと巻き上げられてまた上へ戻っていきます。落ちる天井の通路の先にある壁を壊して進むようになっているようで、もちろん天井が上がっている時に行って壊すしかありません。ちなみにその天井の表面はトゲトゲの針山がお約束です。2様がちらりと初代を見ました。
「ほら、出番じゃないのか」
お前のスティンガーなら楽勝だろという目です。どう見てもさっきの話を根に持っています。
「わかったよ」
初代は落ちてきた天井が上がり出すのを待ってすぐにスティンガーで突っ込んで斬り付けます。本当はこういう場合はイフリートで殴った方がいいのですがそんな暇もないのでできるだけ素早く剣を振り…ましたが壁はなかなか崩れないまま天井が上がりきってしまったので慌てて戻ってきます。
「…うるせえな次で決めてやるよ」
「俺は何も言っていないぞ」
ガシャンと落ちてきた天井が再び上がりだし、初代はもう一度向かいました。今度はなんとかぎりぎり壁を壊すことに成功して中の通路に入り、同時に罠も解除されたらしく余裕で歩いてきた2様の前に初代は向かい合います。
「あー。さっきは悪かった」
素直に謝られて2様も頭を振ります。
「いや、いい。すまんな」
まあでもやっぱり刺されるのは勘弁してほしいがと2様がくすりと笑ったので初代も「覚えとく」と笑いました。
そんなわけで初代が前を歩いて道なりに進んでいくと、大きな広間に出ました。中央の空間を取り囲む柱が並び、壁からはところどころ土台が張り出し、その中のかなり高いところにスフィアがあります。
「今度こそ飛んだ方がいいんじゃないか」
「そう焦らないでせっかく足場があるんだから登っていこうぜ。面倒なら壁でも走ったらどうだ?」
「怒るぞ」
ずずいっ、とまたもや詰め寄る2様の迫力に圧されて初代は仰け反りつつもどうどうと宥めました。つい煽ったり皮肉ったりしてしまうのは性格だから仕方ないのです。
思えばイフリートを手に入れる時も大変だったと初代は懐かしく思いながら柱に登って足場を伝っていき、2様もまた仕方なく付き合ってなんとか登っていきます。一番上には足場がない、と思いきやよく見るとゆっくり明滅する足場があったので慎重に渡って、なんとかスフィアまで辿り着きました。初代が張り切って斬り付けて発動させると、広間の中央の床の一部が音を立てて揺れています。
「ん、なんだ?」
他に変わったところはないので折角ここまで登ったもののそこへ降り立ってみます。すると床の一部が突き出して二人をスフィアのあった場所よりも更に高く運びました。
「ほら見ろ、やっぱり最初から飛んでおけばよかっただろう」
2様が勝ち誇ったように言います。
「そんなの分かるか。二周目に飛べよ」
口を尖らせて初代が言います。
さて相変わらず狭い道を進んでいくと少し開けた場所で行き止まりに突き当たってしまいました。壁に何か仕掛けがあるようにも見えず、視線を落とせば地面に四角い穴が空いていたので飛び込みます。
そこで待っていたのは、ビル街で一戦交えた2匹の白狼とそれを従える巨躯の骸骨悪魔でした。
「ようやくお出ましか。なかなか骨がありそうだな」
「じゃんけん」
「!?」
骨をネタにしていたら唐突に2様が繰り出したじゃんけんに思わず初代はアイボリーを握ったままの拳を出してしまいます。つまり初代はグー、2様の出したパーには負けています。
「よし、お前が狼担当」
「俺かよ!」
言いながらも二人は既に駆け出しています。初代は二匹の狼を、2様は骸骨悪魔をそれぞれ惹きつけて戦闘を開始しました。
狼は以前戦っているので要領は分かっています。走り回っている時はショットガンを中心に撃っていき、立ち止まった隙に接近戦で捉えて地道に削っていきます。二匹とはいえ狼は錐揉みアタック以外には特に攻撃はしてこないので追いかけっこをしていればいずれ倒せます。
一匹、また一匹と片づけたちょうどその時、背後で何かが派手に壊れる音がしたので初代が振り向くと、壊れた石像の破片共々2様が吹っ飛んできました。
「……。」
「おいおい、自分で選んでおいて寝てるなよ」
一呼吸おいて2様はコロコロ…と起き上がります。
「あの槍は厄介だぞ」
骸骨が持っている大きな槍はかなり射程が広くて避けるのも大変です。銃は槍で殆ど防がれ、背後にもなかなか回らせてくれないので攻撃の隙を突いてヒットアンドアウェイで剣を振るい、初代は破壊力のあるイフリートで代わる代わる攻撃していきます。ラストスパートで2様は魔人化し、目にも止まらぬ連続攻撃で一気に叩き込みました。2様のアミュレットに嵌め込まれたクロノハートは相手の時間の流れを遅くするのです。
やったと思いましたが手応えはなく、骸骨は槍を収めるといずこかへ消えてしまいました。
「…気にいらねえ」
戦い方は違うのになんとなくネロアンジェロを思い出させるのか初代は険しい顔をしています。退けはしましたが決着をつけるのはまだお預けのようです。
「骨があっていいじゃないか」
一応慰めてる気があるのか2様は和やかに言います。が、
「次はあんたが狼担当だからな」
初代にビシリと念を押されてしまいました。

MISSION12

ボルヴェルグ、フレキ&ゲリと戦った広間から出て引き続き遺跡を探索です。
通路から落ちたところには、暗い空間の上空に赤い何かが浮いています。それが電気のようなものを散らしながら平行に動き出したかと思いきや、その周りに初代も知る顔が現れました。頭蓋骨の形の悪魔、サルガッソーです。床をよく見るといっちょまえに似顔絵なんかが描かれているので、ここはサルガッソーの巣か何かでしょうか。
「ようやく俺の友達が出てきたか」
初代は嬉々としてショットガンを取り出しました。そのお友達はショットガンで一発で仕留めるのがセオリーです。
ところが、至近距離で放った初代のショットガンはサルガッソーを消すことはできませんでした。
「お、強くなってやがる…っうお!?」
突然ビリッと背中を打たれて初代は咄嗟に前に跳びます。
「結界だな」
2様に言われて床を見ると、ちょうど赤い球を中心にして同心円状に何かで囲まれているのが分かりました。赤い球が動いているのでもちろんそれに沿って結界も動いています。
「友達は適当にしといて、あれをどうにかしよう」
2様が見上げているのは赤い球を囲んで周回している8つのキューブ状のもので、どうやらあれが赤い球の増幅器として結界を作っているようです。
「だとよ。せわしない再会だったな」
そんなわけでサルガッソーは無視して銃から剣に持ち替え、兜割りでキューブを壊していきます。時々巻き込んでサルガッソーにも当たったり移動する結界にひっかかったりしますが、キューブを全部壊してしまえば結界とともにサルガッソーも全ていなくなってしまいました。
そこから中央の床に開いた穴から下に飛び降りると、その先にはルシアが立っていました。
ルシアはそこで杯の形をしたアルカナを手に入れたようですが、どこか浮かない顔をしています。そして自分には持っている資格がないと言って2様に預け、マティエに渡すよう頼むと去っていってしまいました。
「なんだか状況がよく分からないが…」
「込み入った事情があるんだろう」
2様、適当なまとめ方です。
まあとりあえず言われたとおりマティエに届けに行くことにします。便利屋なので運び屋もやらねばなりません。
と、背後で金属が擦れる音がしたので二人は振り向きました。そこにはおそらくルシアに倒されたのであろう、全身を拘束具で固められたような双頭の巨人が横たわっていましたが、ゆっくりと起き上がります。
「…コメントは?」
そこから目を離さないまま2様が初代に向かって尋ねました。
「無口な相手じゃそろそろ話も尽きてきた」
さすがの初代先生も喋らない相手に軽口叩いてたらただの寂しい独り言です。
「俺相手にはよく喋るだろう」
「じゃ、そのうち尽きるんじゃないか?」
そう言い残して初代は銃を撃ちながら標的に走っていきました。それは寂しいなあと思いながら2様も後に続きます。
双頭の巨人プルートニアンは先端に大きな鉄球のついた鎖を投げてくるのでそれを回避しつつ、接近して背後に回り込んで斬り付けます。フィニスも湧いて出てきますが殆どがプルートニアンの振り回す鉄球に巻き込まれて散っていきますが、ほかに壁から出てくるレーザーが厄介です。時には網の目状に張られることもあり2様が華麗なバック宙でかわすのを初代が目を丸くして見ていました。今に始まったことじゃありませんがアクロバティックな42歳です。
「やっぱり俺とあんた全然違って面白いもんだな」
二人の猛攻に今度こそ完全に沈黙したプルートニアンに刺さった剣を抜きつつ、初代は感心したように言います。同じダンテでも剣戟の繋ぎ方や身のこなしがまるで違うのだからもっともです。
「俺は懐かしいがな」
2様がかつての自分に微笑みかけましたが、一方の初代は意外と複雑な表情を浮かべました。
「そう言われるとなんだか悔しいものがあるんだけど…」
「そうか?」
「…ま、少しずつ盗んでやるからな」
初代はニッと笑って剣を収めました。
自分の最大の敵は自分自身とはある意味よく言ったもので、うかうかしていると追いつかれるかもしれんなと2様は肝に銘じたのでした。

To Be Continued...