もしデュマーリ島に初代が同行したら(1)

PROLOGUE

ここは真夜中のデビルメイクライ。扉の開く気配がして初代が目をやると、さきほど依頼の電話に呼び出されて出て行ったはずの2様が立っていました。どういうわけかすぐに帰ってきたようです。
「お?随分早かったじゃねえか。デートすっぽかされたか?」
「いや、どうやら会場はここではないらしい。デュマーリという島に招待されたが…お前も行くか?」
「っつーことは、当たりそうか」
「ああ、悪魔が絡んでいることには間違いないようだ」
「OK、どうせ暇だしな。俺も同行させてもらうぜ」
そんなわけで二人仲良くデュマーリ島に向かうことになりました。

MISSION1

半日ほどかけ、ようやく到着した頃には陽が沈み始めています。オレンジ色の夕日がなかなか綺麗です。
島のシンボルかもしれない大きな時計塔の前に立って初代は首を傾げました。
「さて、着いたはいいが誰もいやしねえ。とりあえず街の方に行ってみるか」
「ふむ…ちょっと様子を見てくる。ここにいろ」
「?」
疑問顔の初代をおいて2様はすたすたと時計塔の中に入っていってしまいました。そして待つこと数分、高い高い時計塔の天辺に出てきた2様は辺りを見回した後、あろうことか数十メートルの高さから一気に飛び降り、ズサッ!とかっこよく地上に降り立ちます。
「向こうの家に煙が見える。行ってみよう」
「あ、ああ…」
かっこいいのか突飛なのか目を丸くして見ていた初代も慌てて後を追います。
「…ちなみにこのへんで大抵のプレイヤーは俺のスティンガーを見て目を疑う」
「何のことか分からねえけど落ち込むくらいなら自虐なんかするもんじゃねえぜ」
あんまりフォローになっていないので2様は少しテンションが下がっています。それはともかくレッドオーブを拾いながら進んでいくと、第一悪魔発見!初代には見慣れない骸骨のような悪魔でしたが、二人がかりでさくさく倒してしまいます。
ふと2様は初代がじっと見ていることに気がついて振り向きました。
「あんたの避け方かっこいいな」
2様の テンションが 少し 上がった!
そのまま道なりに進んで襲ってくる鳥を撃ち落としたり屋根に登ってみたり走ってみたり骸骨を蹴散らしたりしていきます。市街地には人っ子一人いません。
やがて行き止まりに突き当たってしまいました。見上げてみると柵の上が空いていたのでエアハイクで飛び越えていくと広場に出ましたが、出口の鉄格子には鍵がかかっています。
「参ったね。この様子じゃここの管理人とその辺でばったり出会えるとは思えねえが」
鉄格子の隙間から外を覗く初代の後でこれまたかっこよく降り立った2様が何か気がついたようです。広場に青い猿のような悪魔がどこからともなくうようよと現れ、とりあず全て殲滅することにしました。すばしっこいのと小さいのとでなかなか面倒ですが二人なので余裕です。
すると猿悪魔(2様によるとムシラと言うらしい)が死に際にぽとりと何かを落としていきました。
「…鍵だな」
「もしかしてあそこの鉄格子のか?なんでこいつらが持ってるのか考えたくもねえが…」
不機嫌な顔をして初代が言いました。初代様の怒りメーターが上がったようです。2様は感情豊かな彼を微笑ましく思いつつもとにかく広場を出て住宅街に入ります。
やはりここにも悪魔が湧いていたのでもれなく倒し、レッドオーブを辿ってようやく着いた目的地には依頼人のルシアが待っていました。褐色の肌に真っ赤な長い髪を編んだ若い女性ですが、依頼の際2様も見たとおり二本の曲刀を操るなかなかの武闘派です。
ルシアは先日会ったのと似たような容姿の男がもう一人増えているので「えっ」という顔をしましたが、それを言う暇もなく突然大きな爆発音が響き、2様は咄嗟に彼女を抱えて高いところに避難します。
もうもうと立ちこめる煙の中、粉々に爆破された家をルシアは呆然として見ていました。

MISSION2

ルシアは慌ててマティエという名前を呼びます。すると地下から老婆が「やれやれ」と現れました。
話によるとどうやらかつてスパーダがこのデュマーリを救ったらしく、生き証人らしいマティエはダンテをスパーダの息子と呼びます。一体何十年前の話なのか気になるところですが、それよりもマティエが初代のほうを不思議そうに見ていました。
「スパーダの息子が二人いたとは知らなかったね」
「あー。いや、ちょっと違うんだが、色々と込み入った事情でな。俺はこいつの手伝いさ。まあ気にすんなばあさん、心強いだろ?」
初代の言葉にマティエは特に追及することなく頷いて、改めて二人に依頼します。
それは、デュマーリにある大きな複合企業の経営者であるアリウスという男がどうも悪魔と繋がっていてこの島を悪魔の巣にしてしまったというのです。さっきの爆破が悪魔によるものなのかはよく分かりませんが実際に悪魔が蔓延っているのはここに来るまでも見てきたので、アリウスを倒して欲しいと言うマティエに初代は二つ返事で承諾…しようとしたその時、2様が無言でそれを制して前へ出ました。そして徐に懐からコインを取り出してトスします。結果は表。
「いいだろう」
正式に依頼を受け、終わったら父親の話をしようと言うマティエに見送られて二人は港へ通じるという地下墓地へ向かうことになりました。
「…なあ、あのコインはなんか意味があったのか?」
「余興」
あっさり答える2様は相変わらずクールで初代はツッコミを諦めました。一体いつの間にあんな遊び心を仕込んでいたのかと2様の意外な一面を見た気分です。
それはともかく地下墓地には仕掛けがあり、顔の形をした壁を壊さなければ進めないようになっていました。壊すのは得意なのでどんどん壊し、途中の部屋では光る球を壊して扉を解放しました。墓地とはいってもまともに安置されている棺はありません。
またひとつ顔の壁を見つけて壊しに行った初代ですが、うっかり落とし穴に落ちてしまいました。中に敵が待ち構えているのはお約束、動きののろい泥人形のような悪魔です。
「げっ!?」
上半身が吹き飛んだと思ったら下半身だけでいきなりカサカサと動き回ったので初代はびっくりしつつもしっかり追撃し、周りの奴らも同様に倒します。なにやら落とし穴の外も騒がしいので出てみると2様も魔術師のような悪魔と交戦中でしたが、さっさと片付けてやって来ました。
「大丈夫か。壁は壊しておいた」
「ったく、騒がしい墓地もあったもんだな。…お?」
初代の視線の先には青白く輝く球体が浮かんでいました。2様もしげしげとそれを眺めます。
「どうやらこれに魔力を打ち込んで扉の封印を解くようだな」
「そういえば似たようなの知ってるぜ。でっかいナメクジが出なきゃいいけど」
ちゃっちゃと頼むと初代に言われて2様がその球体を斬りつけると幸い何事もなく奥の扉の封印が解かれました。暗いし水は溜まってるし落とし穴はあるしこんな辛気くさいところは早く出たいものです。
さて扉の先の部屋は出口がなく、正面には大きな山羊のような石像が2つ、かと思いきや動き出して悪魔が姿を現しました。すかさず2様はロケットランチャーを、初代はグレネードガンを取り出し豪快に打ち落とします。時間にしてほんの数秒の瞬殺です。
「行き止まりみてえだが…上か?」
初代が見上げてみるとそこには高い空間が広がっていますが、僅かに光が漏れている箇所があり、そこから外へ出られそうです。
「そのようだな。ちょうどここにいいものもあるし」
2様が向かう先、部屋の隅の床にはサークル状の光が溢れる場所がありました。ここに立つと魔力が高まるパワースポットです。2様はそこに立ちながら初代に手招きをします。
「一気に飛んでいくとしよう。俺に掴まれ」
「…は?」
「お前は飛べないだろう」
「いや飛べるって。忘れたのかよ」
初代の言葉に同調するようにその背でアラストルがばちばちと雷を散らします。ちなみにアラストルは未来のダンテである2様が自分を携えていないことに常日頃から不信感を抱いているのですがそれはまた別の話です。
「ああ、訂正する。あそこまで上昇するのは苦手だろう」
言いながらしっかりとアミュレットにエリアルハートを装備し、魔力は満タンで準備万端、さあカモン、と腕を広げて待ち構えます。実際のところ初代はアラストルの力を借りればその翼で空中に留まることも高速飛行もできますが、上昇することは苦手です。でも見たところあんな高さまで上れる梯子があるようにも見えません。初代は渋々と2様の元に向かいました。
「…せめて普通に運んでくれねえかな」
苦い顔をして言いますが2様は腕を広げたまま「早く来い」と急かすばかりです。これはどう見ても向かい合って真正面から、つまりハグせんとする体勢です。ヒロインが違う気がします。
初代が目の前に来るとすかさず2様は捕まえました。
…ぎゅっ。
言い方が違うだけで要するに抱きしめるのと同じ状況です。
「しっかり掴まれ」
2様が言うので初代もぎゅぎゅっと2様に腕を回して掴まります。
「……。」
「……。」
「……。」
「……。」
「…っおい!何じっくり抱き合ってんだよ早く行けよ」
「ああ、忘れてた」
しれっと言いつつようやく魔人化した2様は大きな翼をバッサバッサと羽ばたかせて飛び立ちます。
「…こんな抜け道、誰が通れるんだ」
2様に抱えられ高く高く飛びながら初代が素朴な疑問を口にしたところで、地下墓地の出口に辿り着きました。

MISSION3

降り立った先は市街地でしょうか、いずれにしろこのまま行けば港につくはずですが、いきなり地下墓地へ繋がる扉があるとはなかなか奇抜な街です。地下へ潜っていた間に辺りは暗くなってきていました。
「そっちじゃない、こっちだ」
分かれ道で左へ行こうとした初代を2様が呼び止めます。
「なんで分かるんだよ」
「港があるとしたら坂を下るほうだろう」
「探索しねえのか?」
「無駄なことはしなくていい」
「つまんねえこと言うなあ」
「面倒はお前のことだけで十分だ」
悪かったな、と初代は大袈裟に肩を竦めて見せますが、当の2様はちっとも面倒そうでなく微笑していました。
さて、先に進もうとしましたが突如結界のようなものが二人を取り囲みます。長い下り坂に続々と骸骨(なんとかフィニスというそうです)が現れたかと思いきや、それらをけしかけるように先程墓地の出口で見たのと似た大きな山羊の悪魔(ゴート)が坂の終点で悠々と浮かんでいます。それが雄叫びを上げると地面が震え、二人の立っている足下に現れた魔方陣から青い炎が噴き出しました。間一髪で横によけますが、絶え間なく放ってくるため碌に立っていることもできません。
「ちっ、とりあえずあのせっかちな黒ヤギさんの相手しなきゃなんねえな」
初代の呟きに2様も頷いて、ひとまず道にいる雑魚はスルーして一直線にゴートのほうへ向かいます。とは言ってもその間も地面からの攻撃があるので正確には横へ転がりつつの接近です。近づくとゴートは地上に降りて直接攻撃を仕掛けてきますが、むしろこっちのほうが楽です。一方で銃で援護しつつ一方で大きな体躯をくぐり抜けて斬り付けて倒してしまうと、道にいたフィニスたちも結界も綺麗さっぱり消えてしまいました。
一気に坂を下りてきましたが、外へ繋がると思われる大きな門は鍵がかかっています。仕方ないので唯一開いている扉に行くことにしましたが、その前に初代が遠慮がちに2様に尋ねました。
「あのさ…扉調べるのになんで壁を走るんだ?」
時々2様が閉まっている扉や壁をすたすた走るのが気になっていたようです。
「…押したら開くかもしれないだろう」
2様の目が僅かに泳いでいたので初代もこれ以上ツッコみませんでした。とりあえず二人は扉を開けます。どうやら駅のようですが、壊れた電車が一両放置されています。思えば路面電車の線路がここまでずっと続いていたので、かつては人々の交通手段として走っていたのでしょう。
すると上からぼたっと黒いものが落ちてきたので何かと思えば、ムシラの残骸のようなものです。嫌な予感がしつつ見上げると巨大な猿の悪魔が屋根から飛び降りて来ました。
「バケモノは上から来るのが好きらしい」
のほほんと2様が言います。
「どんなに図体でかくても喋れねえなら猿は猿だぜ」
自分の頭をこつこつと指で叩きつつ、初代も銃を構えました。
「俺が惹きつけて相手してやるから、あんたは後ろから適当につついてやんな」
駆けだした初代に続いて2様も走ります。真正面から振り下ろされる巨大な手をかいくぐりながら目の前で初代がショットガンを放ち、背後に回った2様が斬り付けます。時折逃げるように天井にぶら下がっては落下してくるので、踏みつぶされないように落下点を見計らって回避します。初代が少し距離を置いたその隙に大猿が大きく息を吸い込み、口から衝撃波のようなものを放ってきました。
「おっと、チビの人間相手にお怒りか?」
初代がそれを楽々かわしたところで、背後から淡々と仕事をしていた2様の止めの剣が深々と悪魔に突き刺さります。絶命した大猿の骸が砂と化して消えた後には何か光るものが残されました。どうやら開かずの門の鍵のようです。
「…こいつらに首輪とリードつけて歩けば島中の鍵を集められそうだな」
鍵を拾い上げて初代が言いますが、どうせなら犬の方がいいなと2様は思いました。

MISSION4

かすかに波の音が聞こえてくるので港は近そうです。
その前にムシラの大群が待っていたのでそれを蹴散らし、どんどん坂を下っていきます。道の途中から両脇の建物は崖に変わり、その上に散在するレッドオーブが気になってしょうがないので2様はひょいひょいと登っていきます。が、2様としたことが一番高い崖に登ることができずに降りてきました。相変わらずのポーカーフェイスがちょっと悔しそうです。
「よっしゃ、俺に任せな」
すると初代が意気揚々と向かいました。一つ手前の崖まで登り勢いよくジャンプ、しかしあと一歩で届かない…かと思いきや、がしっと手をついてぶら下がり、そこからよじ登ります。めでたく頂上に立った初代はにこやかにVサインを送ったのでした。
そんな寄り道をしつつも港に到着しましたが、鉄格子が下りていて先に進めそうにありません。辺りを探索すると少し離れたところにあからさまに怪しい石のオブジェクトがふわふわ浮いています。2様がちょっとつついてみると向こうで鉄格子が上がる音が聞こえましたが、そのままカタカタと閉まっていくようです。つまり、発動してから閉まる前にくぐらなければなりません。
「目的は知らねえがこんな遠くにスイッチ置いて不便じゃねえのかな」
初代が首を傾げますが、とりあえず2様は先に初代を鉄格子の前まで行かせて格子を開きます。初代が入り、あとはもう一度2様が自分でスイッチを押し全速力で走って(というより転がって)滑り込めばいいのです、が。
がしゃん!
「……。」
「……。」
無情にも鉄格子が二人を引き裂いてしまいました。
「…大人しく魔人化して走ったほうがいいぜ。なんか持ってたろそういうアミュレット」
「ぎりぎり間に合わないこともないと思うんだが」
「見栄張ってないで早く来てくれよ。俺は待つのは嫌いなんだ」
「…そうか。その言葉、今夜もう一度言ってもらおう」
鉄格子越しに熱視線を送る2様とは反対に初代は明後日のほうを向いて口笛を吹き始めます。初代様のガードはまだ揺るがないようです。とぼける初代に2様は小さく溜息をつくと、踵を返し再びスイッチのほうへ向かっていきました。
「まあ…いつか、な」
ぽつりと呟いた初代の独り言はもちろん2様には届きませんでした。
さて素直に魔人化で突っ走り無事に再会を果たした二人は熱い抱擁をかわして(正確には2様が勢い余って飛び込んだだけですが)大きな扉を開けます。
水浸しの大きな空間に空いた穴からタコのようなイカのようなヘビのような悪魔が出てきました。
「これがほんとのデビルフィッシュってか」
即座に喋り出す初代に2様は心の中で「俺が言おうと思ったのに」と思いましたが、何も言わずに戦いを開始します。
触手が地面をなぎ払うように暴れているので縄跳びの要領でジャンプしながら撃たなければなりません。触手は倒してもすぐに再生してしまいますが、なんとか死角になっているところを見つけて隅っこの方で撃ち続けます…が、どうにも欲求不満です。触手が消えた瞬間に2様は魔人化すると本体へ斬りかかり、それを見て初代もおお、と思いましたが次の瞬間2様が突然吹き飛ばされてしまいました。タコ悪魔がバリアを張ったようです。ひとまずそれが解かれるのを待ってから再び地道に銃撃していると、やがてぽろぽろと岩が崩れるように悪魔の体は砕けて消えてしまいました。
「大丈夫か?」
「ああ」
さっき吹き飛ばされた2様はピンピンしていますが、近づいた際にタコ墨もとい毒霧に巻かれたらしく少しだけ休みます。その横で初代は海に繋がっているであろう穴を覗き込みながら「潜らずに済んで良かった」とかなんとか言っています。
生憎ここは行き止まりなので一体どうしたものかと考えましたが、ふと開けたシャッターに一台のバイクがありました。バイクというとダンテにとってはテメンニグルすら登れる最強の乗り物です。2様は颯爽と跨がりました。
「崩れて行けなかった道があったな。ひとっ走りするか」
自分が運転したかったのに先を越された初代は仕方なく2様の後ろに跨がり、案の定また「しっかり掴まれ」と急かされてぎゅうっと密着します。
そうして42歳と30歳は盗んだバイクで走り出しました。

MISSION5

辺りはすっかり暗くなりました。市街地からバイクをかっ飛ばしてやってきたところは高層ビルが建ち並ぶ島の中心地と思われるところです。
ひとまずバイクを降りて探索をしようとすると、早速の結界が行く手を阻みます。現れたのは2匹の白い狼でした。
「ちょっとは可愛いのが出てきたか。まさか首が伸びるんじゃねえだろうな」
銃を構えながら初代が言います。かねがね初代のことをわんこっぽいと思っている2様にとってはなかなか微笑ましい共演ですが、悪魔は悪魔、すばしっこく走り回るのでやはり銃で応戦します。時折錐揉みアタックをしてきますがその前に必ず遠吠えをするので容易に避けられます。
2匹とも仕留めたと思いきや手応えがありません。倒れた狼が白い光となって飛び立ったのは高層ビルの上、そこにはフィニスとは違う大きな骸骨のような悪魔が狼たちを従えて二人を見下ろしていました。仕掛けてくるのかと思いきやそのままどこかへ消えてしまいます。
「…ペットをけしかけて自分は高見の見物とは小せえ野郎だ」
初代様はガッツがない奴は嫌いなのでプンスカしています。
「首輪つけて連れ歩きたかったが残念だな」
しかし2様がまだそんな暢気なことを言ったので初代は脱力しました。
気を取り直して進んでいくと今度は鳥が襲いかかってきたので2様のサブマシンガンが火を噴きます。その間に初代はゴート2匹を倒し、続いて出てきた2匹も二人で返り討ちにしました。敵の本拠地に近づいているせいか敵も増えてきたような気がします。トンネルを抜けて道路を走っていると巨大猿ことオラングエラまでいました。
「おい、可愛くないのがまたいるぜ」
「構いたくないな」
散々言っておいて面倒なのでスルーし、アスファルトの道路をひた走ります。
道路を塞ぐように転がっているバスの横を抜けたところで何か気配がしたと思いきや突然大砲が飛んできました。それを間一髪で避け、見ると街中に不似合いな戦車がありました。しかしよく見ると普通の戦車ではありません。まるで生きているかのようにぎょろぎょろと動く目がついています。
「こりゃ驚いたな…普通の戦車じゃねえのは分かるが普通の悪魔でもねえ」
「まるで融合しているように見える」
武器の形をした悪魔は沢山見ていますが、人間の作った機械のような悪魔は見たことがありません。黒幕と関係があるのかどうかはよく分かりませんがきな臭いことは確かです。
とはいえこの戦車、走ることはできないようでその場で撃ってくるだけなので、わざわざ主砲の前に立たない限りまず当たることはありません。懐に飛び込んでしまえばこっちのもの、他の戦車の攻撃が当たらないよう盾にしつつひたすら斬り付けます。近くにいる2台と少し離れたところにある1台も撃破して一息つく暇もなく、今度は同じように目玉付きの攻撃ヘリコプターが登場しました。
「ったく、悪魔が戦争すんじゃねえよ!」
「とりあえずここは離れよう」
さっき倒した戦車の爆発で辺りは火の海になっているのでこのままでは焼かれてしまいます。二人は近くのビルの中に入りますがどういうわけかヘリはビルの中までも追ってくるものだから尋常じゃありません。プロペラの餌食になる前に階段もない足場を上へ上へ登っていきます。
「…また飛ぼうか」
「いい、自分で登れる」
地下墓地でしたように2様がお誘いをかけますが初代は意地でも頑張って登っていきます。でも下からはヘリが迫ってきているし面倒なので2様はいきなり後ろから初代に抱きつきました。当然、初代はびっくりです。
「っおい!?」
「たまには甘えろ」
言うや否や2様は魔人化すると強引に初代を抱えて飛び立ちます。おかげであっさりと屋上に出られましたが、下ろした途端にわーわー言ってくる初代の文句をヘリの機関砲が遮りました。カップルの話し合いは置いといてひとまず隣のビル、また隣のビルと逃げていきますがどこまでも追ってきてキリがないので屋上で決着をつけることにします。
「飛んだらミンチだぜ、気をつけな」
初代が皮肉りますが2様はどこ吹く風(いつもそんな態度ですが)、これで十分だとミサイルランチャーを担ぎました。
「どうせお前を落とすより簡単だ」
「うるせえよ」
ツッコミの勢いそのままに初代もグレネードガンを放ちます。向こうは降りてくることはなく上空で機関砲やミサイルを撃ってくるので確実にかわしながら撃っていき、特に苦労することもなく撃墜してしまいました。
が、こんなことならここまで引っ張らず最初から撃墜してしまえばよかったのに…と初代は思いましたがその辺のツッコミはタブーだぞと2様が目で語っていました。

MISSION6

2様は高いところが好きなのか高いところから飛び降りるのが好きなのか、高層ビルから飛び降りたがります。ここから落ちても普通に着地できるなら彼に飛び降り自殺は不可能ですから安心ですし、確かに一気に飛び降りた方が早いですが初代はあまり乗り気ではありませんでした。かつて、不測のこととは言え1階から地下へ背中から落ちて結構痛かったからです。
なんなら運んでやろうかと2様が懲りずに言いますが今度こそ初代はお断りしました。ちなみにアラストルは下降もあんまり得意ではありません。帰ったら特訓だな、と初代は消沈するアラストルに向かって言いました。
華麗に飛び降りる2様に続いて初代も大人しく飛び降りて、道なりに進んで行きます。先程とは打って変わって敵もおらず静かです。
「それにしても、俺の知らない悪魔ばかりだ」
てくてく歩きながら初代がのんびりと言います。そこそこ高位の悪魔はともかくとして、大量発生する雑魚クラスで猿や骸骨などは初代は初めて見ました。
「悪魔にも流行り廃りがあるらしいからな」
2様は年齢のぶん色々な種類を見てきたようです。俺もまだまだだなー、と初代が思っていると前を歩いていた2様がふと立ち止まって上を見、同時に初代の背のアラストルもバチバチと反応しています。
あるビルの表面が波打った気がしましたがそれは気のせいではなく、ビルから生まれ出ようとするかのように巨人の顔が現れました。
「おいおい…」
見上げながら初代が思わず声を漏らしますが、その間にも巨人の手がまるで布のように歪んだビルを破って出てきます。そして両手をついて大きく開けた口から辺り構わずビームを発射しました。周りのビルが粉々になって降ってくる瓦礫を避け、二人は巨人と対峙します。
「そんだけでかい口を持っててこいつも喋らねえのか。この時代は無口が流行りか?」
「…俺を見るな」
2様の性格はともかくとして、巨人はビルから上半身だけ出している状態なので動き回ることはありません。頭を動かしてビームを放ってきますが、接近して巨人の口より下に入り込んでしまえば当たらないので安全に攻撃することができます。大きすぎるのも考え物です。
しかししばらくすると怒ったのか地面に手を打ちつけ、その周辺を火の海にしたのでやむを得ず離れます。どこからともなくコウモリの大群が飛んできますが適当に撃ち落としながら引き続き巨人も撃っていると、頭が落ちました。
しかしこれで終わりではなく、あろうことか頭だけフワフワ浮きながらこちらを見ています。気色悪いことこの上ありません。
頭は常にこちらを追いながら電撃を放ってくるので二人も常に走りながらかわしていきます。やがてしばらくすると浮いていた頭は地上に降り、大きく口を開けて拡散ビームを放とうとしたその隙に2様は背後へ飛び込んで斬り付けました。
トドメを持って行かれた初代は、2様は飛び込み前転での移動テクニックが早いのでずるいなあとちょっとだけ悔しそうにしています。
その時、上空でバリバリと音がして上を見ると、先程遭ったような悪魔ヘリではなく普通のヘリが一機、とあるビルへ向かっていくのが見えました。

To Be Continued...